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超小型人工衛星「つくし」(QSAT-EOS)見学

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去年の8月12日、九州大学伊都キャンパスにて超小型人工衛星「つくし」(QSAT-EOS)を見学させていただきました。
この見学は、超小型人工衛星QSAT-EOS愛称当選者の記念行事の一環でした。

九州発 地球観測超小型衛星 QSAT-EOSの愛称が「つくし」に決定>(PDF)


宇宙開発ファンとしては、ありがたい名誉とめったにない機会を与えていただきました。これは見学すべきだと九州大学伊都キャンパスまで行って参りました。

「つくし」の応援兼ねて見学記を記事にしてみましたのでどうぞ。

見学のきっかけは、8月6日に届いた1通のメールでした。
メールの題名は、「超小型人工衛星QSAT-EOS 愛称募集へ御当選の件」
一瞬なんのメールか分かりませんでした。内容を読むと去年自分が応募した超小型人工衛星「QSAT-EOS」の愛称がめでたく採用されたとありました。

QSAT-EOSの愛称は「つくし」
確かに自分が応募した愛称名です。応募した後、なんの音沙汰もなかったのでこれは外れたかと思っていたらこのうれしい結果。
メールを読み続けると、8月11日か12日に九州大学伊都キャンパスまで来れば、「つくし」の見学が出来るとあります。

日程的には、ちょうど夏休みにかぶっていて問題ありません。しかし、家族が入院していたりお盆の時期で移動手段が確保できるか分かりません。家族に予定を確認したり友人に移動方法を教えてもらったり、とにかく行く方向に決定。

ところが、台風11号が接近。そもそも移動出来るか分からない状況になってきました。移動手段としては新幹線で往復を考え、なんとかチケットも入手していました。これだと新幹線は台風の影響を直接受けそう。慌てて移動日を1日ずらして事なきを得ることになりました。
見学前日の最終便1本前で博多入り。駅前のホテルで宿泊して、当日を迎える算段をとりました。


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1日ずらしたおかげで台風の影響もなく移動開始。

新幹線はひさびさでしたけどあんなに揺れる乗り物でしたっけ? 最近購入したKindle Paperwhiteで読書しながら移動してました。意外に読書が進まないで博多に到着。
日付が変わる直前にホテルに入りましたけど、けっこうお客さんがいるもんです。さっさと準備をして寝ました。


見学当日は、天気もよく暑かったのでチェックアウト時間ぎりぎりまでホテルにいました。

まずは博多駅に移動して、伊都キャンパスへ向かうバス停探し。場所を勘違いしていてちょっと焦りましたけど、道路の反対側に見つけて一安心。時刻も調べていた時間と合っていたのでこれまた一安心。

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バスの時間までちょっとあるので早めの昼食を取ることにしました。地下鉄で移動して呉服町の「みやけうどん」へ。直前に「孤独のグルメ」を見たもんでつい(笑)


再び、博多駅に戻ってバスを待ちます。博多ってバスが多い。次から次へとバスが来る。予定の時刻になってもバスが来なかったので乗り損ねたかと思いました。3分遅れで来たバスに乗って伊都キャンパスへ。

バスに乗れたのは良いのですが、途中で渋滞に巻き込まれて予定よりも約30分遅れて伊都キャンパスに到着してしまいました……。まことに申し訳ありませんでした。


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九州大学伊都キャンパスは、実に広かったです。山の中というよりは連なる丘のあちらこちらに建物がある感じです。

到着したバス停で連絡を入れたらわざわざ迎えに来ていただきました。
人工衛星を見せていただく建物は、キャンパスでも割と奥の方にある「先進航空宇宙工学実験棟」でした。
こちらは、航空宇宙でも特殊な実験などを行う建物だそうです。


すでに他の当選者の方も来られていて実験棟の中を見学されていました。
プロジェクト総括の八坂先生はじめ重鎮の先生方から挨拶されて恐縮するばかりです。なんだか学生時代に戻って面接を受けている気分になりました。

続いて、実験棟にあるクリーンルームの外から実際に宇宙へ行く「つくし」のフライトモデルを見ながら、衛星の説明を聞かせてもらいました。
説明していただいた内容を自分なりにまとめてみました。(調べてみましたが間違っていたり、諸般の事情でぼやかしている場合がありますのでその点はご勘弁を)


「つくし」こと「QSAT-EOS」は、一辺50センチの立方体で重さは約50キロの人工衛星。大きさから超小型人工衛星と分類されています。

主なミッションは、光学カメラによる地球撮影。撮影の目的は、災害監視と植生のモニターです。
サブミッションとして、地磁気の精密測定、微小デブリの観測、大気水蒸気の精密観測となっています。

詳しくは公式ページをご覧下さい。

facebook<Qsat-Eos-Project

Twitter<QSAT-EOS (@QSAT_EOS)

ホームページ<QSAT-EOS Official Website


人工衛星は、「X」「Y」「Z」と「+」「-」の組み合わせで人工衛星本体の面を説明します。しかし、説明するにあたってどうも取っつきにくいので、さいころ(「天一地六東五西二南三北四」(雌サイコロ))の面にたとえて説明してます。
(「一」→「+Z面」、「二」→「-Y面」、「三」→「+X面」、「四」→「-X面」、「五」→「+Y面」、「六」→「-Z面」)

「一」(+Z面)に当たる部分には、光学カメラのレンズと地上と交信するアンテナとGPSアンテナが取り付けられています。常にこちら側を地球へ向くように姿勢制御されて地表の撮影を行います。

レンズは直径10センチ7センチ。これで分解能約7メートル(1ピクセル約5メートル?くらいだそうです。実際は打ち上がってみないと、というところはあるみたいですけど)
<→上記について平山先生のコメントを一緒にご覧下さい>

超小型人工衛星としては、かなりの分解能ですが大型衛星と比べるとそれほどではありません。

しかし、これにはちゃんと理由があって主目的である災害監視に関係があります。東南アジアで災害があった時に地球観測衛星の画像を提供したところ「細かすぎる」と指摘があったそうです。地上を細かく見るのであれば分解能は小さいほどよいのですが、災害となると広範囲で状況を知りたい。そうなると分解能が小さければ良いというものではないそうです。

50センチクラスの超小型人工衛星に搭載するカメラの性能としては、この災害監視に向いているそうです。この話はまさに「目から鱗が落ちる」でした。

時代は、単に取得した画像からいろいろなことを読み解くだけでなく、目的に合わせた分解能の画像を取得する人工衛星が作られるようになってきたんですね。


「二」(-Y面)には、微小デブリ(宇宙ゴミ)用のセンサー、スタートラッカー(姿勢を測るためのセンサー)が取り付けられています。

微小デブリ用のセンサーは、10センチ四方の領域に0.05ミリ幅のセンサーが0.1ミリ間隔で並べられており、ここにデブリがぶつかるとセンサーが切れてデブリ検出となるそうです。

「つくし」では、衛星本体のごく一部にしかセンサーが取りつけられていませんが、今後の計画で一面いっぱいにセンサーを取り付けて高頻度・広範囲の微小デブリ監視体制を実現するためのプロジェクトもあるそうです。
微小デブリ環境モニタリング計画 IDEA


「つくし」の動力源である太陽電池セルは、サイコロの三、四、五、六面(+X、+Y、-X、-Z面)に取り付けられています。

「六」(-Z面)は、ロケット結合部、展開セイル機構、Sバンドアンテナ、GPSアンテナ、スタートラッカー、太陽センサーがあるため、他の面ほど太陽電池セルは貼り付けられていません。

ちなみに、太陽センサーは、「三、五、六(+X、+Y、-Z面)」が集まる角と「-、二、四(+Z、-Y、-X面)が集まる角にそれぞれ取り付けられています。

展開セイル機構は、ミッション完了後、振り出し竿を応用した展開機能で3メートル×0.35メートルのセイルを伸ばします。これによって軌道上のごくごく薄い大気による抵抗で高度を下げる実験が行われます。

人工衛星は、「25年ルール」という運用終了後25年以内に大気圏に突入させる軌道、もしくは静止軌道から約300キロメートル上の墓場軌道にデオービットすることが定められています。
「つくし」が投入される軌道では、特に処置を行わないと60年近く軌道を回る計算になっています。このセイルを展開することによって約21年で大気圏に突入していく予定になっています。

超小型衛星は、本体が小さいためこのような処置が出来ていないのが現状です。この展開セイル機構の実験はある意味画期的なことです。
ちなみに、この展開機構は、釣り具メーカーの「がまかつ」が協力しています。確かに3メートルのブームを伸ばすとなると釣り竿メーカーは“あり”ですね。


「つくし」は、「三(+X面)」を進行方向(この表現良いのかな?)にして地球を巡っていきます。姿勢制御を行う「リアクションホイール」と姿勢を検知する「スタートラッカー」を搭載しています。

一昔前の超小型人工衛星では、姿勢を制御することはしなかったか、地磁気を利用した姿勢制御でそんなに精度の高いことは出来ませんでした。しかし、今や「リアクションホイール」に「スタートラッカー」搭載でかなり能動的に姿勢制御してしまうんですから正直びっくりです。小さいけど、大型の人工衛星にひけをとらない「つくし」でした。


他にも、実験棟の中を案内していただきました。
(「つくし」の撮影自体は諸般の事情がありましたが、施設等の写真は撮影可能で公開許可を頂きましたのでありがたく掲載させてもらいます)


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疑似太陽光照射装置


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振動試験装置


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真空チャンバー


他にも実験装置などいろいろ興味深いものを見せていただきました(笑)

屋外の施設についても見学させてもらいました。

まず、「つくし」と交信するアンテナ。
先進航空宇宙工学実験棟からちょっと離れた衛星通信実験棟の敷地に設置してありました。

アンテナは、衛星にコマンドやテレメトリーをやり取りするSバンドのパラボラアンテナ、画像などを取得するKuバンドのパラボラアンテナ(カセグレンアンテナ)の2基体制です。直径は2基とも2.4メートルです。2.3メートル(2.4メートルだったかな)。

他の大学等で追跡などしてもらうそうですが、基本的にはこちらのアンテナだけで衛星の運用をおこなうそうです。


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Kuバンドのパラボラアンテナ(カセグレンアンテナ)


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Sバンドのパラボラアンテナ


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ちょっと分かりにくいですけど、奥に見える建物が通信を行う施設です。専用の施設ではなく、衛星通信実験棟の一部を使用しているそうです。


ちなみに、超小型人工衛星では、通信用の周波数にアマチュア無線の周波数帯を使用している場合が多いです。この周波数帯であれば、アマチュア無線のトランシーバーやちょっとした受信機があれば、人工衛星からの電波を受信することが出来ます。

「つくし」は、残念ながらアマチュア無線の周波数帯を使用していません。それについて聞いてみたところ、アマチュア無線の周波数帯だと、「つくし」が撮影した画像を地上に送信するには難しく使用は無理だそうです。

私もアマチュア無線家なのでこのあたりの都合はちょっと分かります。周波数が高くなると伝送する情報量が大きくなるメリットがあるので、大きなデータや画像など送るには高い周波数を使った方が有利になります。

アマチュア無線が使用している周波数帯だと、「つくし」が使用する周波数より低いので情報量を大きく出来ずミッションに適さない、ということになります。ただし、アマチュア無線の周波数帯でも画像を送ることは可能です。ただ、データ量の問題で使えない、ということです。

<→上記について平山先生のコメントを一緒にご覧下さい>


アンテナを見学しながら聞いた話は他にもあります。

人工衛星は宇宙空間を飛翔します。地上と違って宇宙放射線に常にさらされます。そのため、どれほどの宇宙放射線に耐えられるか試験する必要があります。

普通は、専用施設に人工衛星を持ち込んで試験をする必要があります。ところが同じ伊都キャンパス内の「加速器・ビーム応用科学センター」にコバルト60ガンマ線照射装置があるのでそちらで試験を行ったそうです。
試験設備がすぐそばにあることは人工衛星開発にとって利点ですよね。


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最後に研究室を少しだけ見せていただきました。

こういう言い方はなんですが、一般公開で見られるきれいに片付けられた研究室と違って、いままさに研究が行われている渾然とした場を見ることが出来ました。
なかなか大学の研究室なんか見られませんから。中を見せてもらっただけで楽しかったです。

なんだかんだで、1時間半ほど見学させていただきました。
帰りのバスまで少し時間があったのでちょっと構内をぶらぶらしてみました。

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構内のあちらこちらに見える風車。


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フード(風レンズ集風体)に特徴があります。「レンズ風車」といって九州大学で研究が進められている風車です。

発電能力が向上すると共にフードがあることによって鳥たちからもよく見えるそうでバードストライクも軽減できる優れものです。


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「九州大学」の石碑


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研究室見学中に教えてもらった校舎から見える「背振山地」

福岡空港に到着するとILC(次世代実験施設「国際リニアコライダー」)誘致の看板を見かけます。
地名は知っていましたが、実際に場所を見たのは初めてです。

「つくし」(QSAT-EOS)は、2014年11月6日に打ち上げられ、無事予定の軌道に投入されました。その日のうちに通信も確保され人工衛星として活動を開始しました。
現在は、初期運用のクリティカル運用中で観測へ向けて準備中だそうです。


宇宙開発ファンとしては大変な名誉をいただき、また実際に宇宙へ飛び立つ実機の人工衛星を見せていただく機会を得ることが出来ました。
超小型衛星とありますけど、機能や性能は立派なミッションを遂行する人工衛星です。もしかしなくても超小型人工衛星が盛り上がっていく良い時代に見学出来たのかな、としみじみ思いました。

最後に、見学にあたって「つくし」(QSAT-EOS)プロジェクトのみなさまありがとうございました。特に見学の案内をしていただきました平山先生には迎えから施設各所の説明をしていただき大変ありがとうございました。そもそも、愛称に応募しようとしたのは平山先生のTwitter上の告知でした。

たいしたことは出来ませんけど、出来る限りで「つくし」の応援をさせてもらいます。そして、無事のミッション完遂を願っています。
本当にありがとうございました。

記事を書くにあたって公式ページをはじめ、以下のページなどを参考にしました。みなさまの「つくし」への理解に繋がれば幸いです。


九州大学プレスリリース

超小型衛星通信地上局パラボラアンテナ始動式を開催>(PDF)

九州発 地球観測超小型衛星QSAT-EOS の打上げ決定について>(PDF)

九州発 地球観測超小型衛星QSAT-EOS(愛称「つくし」)打ち上げ成功!>(PDF)


佐賀大学新井康平先生のページ

QSAT/EOSミッション>(PDF)

QSAT/EOSデータ利用方法>(PDF)


The 3rd Nano-Satellite Symposiumのページ

Orbital Decay Accelerator: A case of QSAT-EOS>(PDF)


無線と高周波の技術開発マガジン「RFワールド No.20」

<技術解説「超小型衛星に搭載する無線機器の紹介」>

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追記
この記事を掲載した後で、平山先生から補足等のコメントを頂きました。
まことにお手数かけてすみません。

補足を受けて、記事の訂正とコメントへのリンクを追加しました。
平山先生、ありがとうございました。

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コメント

見学記、ありがとうございます。
数値など、補足させていただきます。

レンズの口径は100mm、焦点距離400mmです。
直下の場合の撮影範囲は9.6×13.2kmになります。
分解能は、ボケもブレもない理想光学系とした場合で、直下を撮影したとき1ピクセルが5メートル四方になります。実際にはブレやボケが発生して、良くても分解能7~10mだろうと思っています。

地上局のパラボラアンテナは2基とも直径2.4mです。

アマチュア無線を使わない理由は、通信速度の問題もありますが、ミッションが法的に「アマチュア業務」に該当しないと、アマチュア無線の局免許が認められないという問題もあります。(ただし、その場合でも、アマチュア無線と同じ周波数を使いつつ「実験局」という認可をうける方法もあります。)

投稿: ひらやま | 2015/01/04 10:53

平山先生、コメントありがとうございます。

数値等の補足わざわざすみません。
一応、見学後に自分なりに調べたつもりでしたがやっぱり間違えてしまいました。

記事は、コメントを引用させていただいて修正します。

改めてありがとうございました。

投稿: 山本 | 2015/01/04 21:20

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