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都民じゃないけど他人事ではないこと

最近の東京都青少年育成条例の騒ぎを見ているとこの二つのことが頭に浮かびました。

一つ目は、だいぶ前に駐車違反で罰金払ってきました。
それに至る経緯はこんなことでした。

会社の上司がいつまで経っても出社してこない。携帯に連絡してもつながらない。なにがあったのか? 部内騒然!
後輩が機転を利かして、路線の運行状況を調べたら救護人が出た影響の遅延情報を見つけました。救護人がおろされた駅に確認を取ったら大当たり。すぐさま上司が運び込まれた病院を教えてもらい駆けつけました。

会社の車で病院に向かうと駐車場は満杯。仕方なしに路駐しました。前後にもかなりの車が路駐していたのでまあ大丈夫かな、と思いました。
なんだかんだで約一時間後病院を出てみれば駐車違反の切符を切られていました。

ええ、罰金払いましたよ。緊急事態とはいえ駐車違反をしましたからね。それがルールですから。
それはそれとして、納得いかないのは私よりも前から止まっていた車には切符が切られていないこと。

あとで教えてもらったのですが、その病院の周囲は「駐車違反取締最重点地域」だったそうです。
ここからは、力一杯邪推ですが、過去に路駐している車に切符を切っていたんでしょうけど、病院の駐車場に入れなかった人たちからの苦情が病院にさんざん言っており、「めこぼし」があった。
でも、ここは最重点地域。社有車なら病院と関係があるか分からないし、わざわざ警察にたてつくこともないし、罰金も払うだろう、ちゃんと実績もあがるし、といったことからうちの車だけ狙われた……!?

駐車違反をしたこと自体は、どんな理由があれ私が悪いです。でも、なんで周りの車はちゃんと切符を切られていないのか。この不公平感と決められたルールが適切に守るつもりがないことを肌で感じました。


もう一つは、少し前に読んだ『名文どろぼう』の一説です。

映画では、黒澤明監督に回想がある。『サンパギタの花』という作品を撮ろうとして、内務省で脚本の検閲を受けた。家族で娘の誕生日を祝う場面がけしからん、という。

検閲官は。大体、誕生日を祝うなどという行為は米英的な習慣だ、今時、そんな場面を書くとは、もってのほかだ、と云った。
そこで私は、すかさず、云ってやった。
すると、天長節を祝うのもいけないのですか。天皇の誕生日を祝う、日本の祝日ですが、あれも米英的な習慣で、もってのほかの行為なのでしょうか、と。
検察官は、真蒼になった。

--黒澤 明「蝦蟇の油」(岩波現代文庫)

検察官は、おそらく不敬罪から“連想”してこのようなことを導き出したのでしょう。根拠のない連想で刑法を運用されてはたまりません。まったく持って恣意的です。

もうひとつは、「検察官が真蒼になった」けど、この連想から逆説的に自分が不敬罪を起こしたはずなのに、この検察官が逮捕されたり罰が与えられたことはなかったでしょう。
つまり、取り締まる側が取り締まるルールで罰されることがまずないことを意味しています。

東京都青少年育成条例の騒ぎも、条例を作る人たち、それを実際に運用する人たちが、このふたつに当てはまることをやる可能性が十分にあるから反対されていることに気がついていないのでしょうか?
簡単に言えば、この騒ぎを見ていると条例提案者や都議会の人たちを信用されていない、出来ないってことです。

取り締まる側が東京都青少年育成条例を違反しても多分処罰の対象にならないですよね。内々に何事もなかったように処理してしまう(可能性が十分ある)
都議会の方たちの子供が漫画やアニメで条例に引っかかったら自分たちはどうするんでしょうね?
仮に適切に運用されたとしても私が喰らった駐車違反のように何らかのバイアスがかかって運用されることが十分にある。


ちなみに都知事の場合は、これとは別ですね。
あの方、自分は東京都の“家長”だと思っているから。
親父に刃向かうのは構わないけど、とにかく最後にはオレのいうことを聞け。一度や二度の抵抗は認めてやるがオレの意に沿わないことは断じて揺るさん、だけだと思います。

自分に刃向かってきた奴が出てきたのでぶったたいているだけ。条例の内容がおかしい・合っているとかは「ささいなこと」で関係ないんでしょう。

知事なんだから、危機管理とか都民がよりよく活動しやすいための後方支援など行うリーダーなのに、一昔前の親父さんの感覚がちょっと時代にあっていないのが「分からない」のでしょうね。
話しがかみ合うわけがない。


この問題は、青少年育成やアニメや漫画という分野の話しだけで騒がれているだけではありません。
これだけ騒がれいる、反対されている、信用されていない背景はこんなことだと思います。
15日までではなくて15日以降の動向に目を向けないと。

都民じゃないですけど、他人事ではないですよね。

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コメント

お久しぶりの、HINAKAです。

山本様

『東京都青少年健全育成条例』に関しては、もう仰る通りです。
ちなみに、〈松文館事件〉と言うのがありまして、とある警視庁OBの衆議院議員に、支持者の男性から「息子が松文館という出版社の猥褻な漫画本を読んでいる!けしからんから、取り締まってくれ!!」と書面で頼まれ、それをそのまま警視庁の元部下に自分の添え書きと一緒に届けました。

しばらくして、松文館の編集長と社長及び作家1名が、「猥褻物陳列罪」で逮捕略式起訴され、罰金を払って釈放されました。
ただこの作家の描いた作品と、件の訴状の主の息子が読んでいた作品の著者は、全くの別人でもちろん作品もまったく別のものです。理由は、上司に言われて強制捜査に入ったはいいが、〈件の作者と作品では絵が稚拙で裁判所が猥褻と判断してくれない!〉という現場の判断から、〈より精緻で具体的な描写、つまり絵の上手い作品とその作者を逮捕し、編集長と社長も逮捕できた〉という、唖然とするものでした。

当然、出版社側が改めて裁判所に訴え、警察は出版社側の3名を即日逮捕、拘禁しました。
何でそうなったのかよく分かりませんが、警察からの出向裁判長(と言う制度があるそうです)は、出版社側の作品の内容と表現の自由から、逮捕から略式起訴までの無効と、損害賠償を要求を却下しただけでは、足らなかったようです。

判決は、作者が作品内容の猥褻な表現と、物語性の重要性を訴えた事を、「捜査員に対する侮辱的態度で反省の余地無し」という、理由で執行猶予無しの懲役2年という、この手の判例では最高レベルの実刑判決を出しました。
この辺で、この事件はコミックの表現を巡る裁判として、大きく取り沙汰(関係者と興味のある人達の間では)されるようになりましたが、出版社側が即時抗告。2審では、有罪ではあるものの、その作者の態度神妙に付き実刑無しの、罰金判決としました。
この落差の激しさも凄いのですが、この間ついに作者の保釈はなぜか認められず、約半年間拘置し続けられました。

現在は保釈され、最高裁で上告審議中のハズです。
なおこの作者は、執筆活動を再開されましたが、作品から以前の迫力は消え、「牙が折られた」事は本人も認められています。
作者にとっての何よりの打撃は、お子さまもいる家族に対する世間の迫害で、一時警察に保護を求めて、居場所を隠して暮らす事態になったそうです。

この事件は、それ自体が憲法違反を問われている、「猥褻物陳列罪」という、立派な刑法に基づく事件ですが、それですらどこか今回の「駐車違反」の一件と、通じる気がなさいませんか?
「猥褻」という曖昧で具体性の無い表現を、刑事罰の対象とする事が、どれほど恣意的に使う側の自由であるかという、好事例であると思います。

そして今回の都条例……もはや、法律でも無いものに、どれだけの影響力があるのか?
それも、余りの情けなさに涙も出ませんが、今は一応カッコ付きの(除く実写)として、マンガとアニメのみに対すると言う、何ともマァ大人気ない露骨な嫌悪表現!
実写を除いた時点で、大義名分であったハズの「児童ポルノ禁止」の看板さえ、かなぐり捨てたなりふり構わぬ嫌悪感からの規制攻撃。

そして、それを漫然と受け入れた、民主党の主体性の無さ!は、もちろんですが、安直に賛成した自民・公明党議員達の、浅慮も必ずや将来に禍根を残すと思います。
この不景気の時代に、唯一何とか好調を維持している(事が重厚長大の老舗産業界の反発も招いた事は確かです)2大輸出文化産業の根を枯らすマネをして、どうするのか?秋葉原には、2度と春は来ないかも知れません……。

長広舌、失礼致しました。

投稿: HINAKA | 2010/12/21 21:27

HINAKAさん、お久しぶりです。いつもコメントありがとうございます。

あちら側の人たちは昔も今も同じことしていますね。
この騒ぎは一種の「弱いもの狩り」ですよ。抗議のしてこない連中を絞って取り締まり成果を“上げた”ことにするんでしょうね。

条例に正当な言い分があれば分からんでもないですが、これではとうてい納得できません。この構造をなんとかしないと。

こうなると作者や業界や読み手が萎縮することなく、また、向う側と真っ正面から対決するのではなく「予想の斜め上行くこと(それがなんだか分かりませんけど)」が最善策なんでしょうね。

投稿: 山本 | 2010/12/25 02:49

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» 『松文館事件(裁判)』もしこのまま「非実在青少年条例」が施行されたら!? [『あんのん』ブログ・HINAKAの雑記です!]
前項で、《18禁・成年コミックの名作!》と言うところで、触れて〈フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』へのリンク〉も行ったのですが、想像以上に「松文館事件(裁判)」と言うものが、一般には知られていないようです。 書籍が、「猥褻物」として裁判で〈有罪〉が決まった例としては、有名な「チャタレイ夫人の恋人」裁判による、有罪判決が、有名です。しかもこの判決を受けて、この今や古典的恋愛小説の名作とされる、官能小説(ポルノとはとても呼べるレベルではありません!)の傑作は未だに「猥褻表現」とされ... [続きを読む]

受信: 2010/12/21 21:29

» 地方新聞に、ジャナーリズムの片鱗を見た!簡潔明瞭な『東京都青少年育成条例改正』批判!! [『あんのん』ブログ・HINAKAの雑記です!]
大手の新聞、読売新聞に至っては、明らかに東京都と結んで〈改正条例案〉可決に向け、先行報道をするという有様です!(詳しくは拙ブログ記事参照・リンク済み) それ以外の大手新聞各社、同じくTV局の報道等も、今回都議会において可決成立した『東京都青少年健全育成条例・改正』の、もっとも大きな問題には触れずに、無難正常な条例として取り扱っています。 問題点は、「~という指摘があります」などと、間の抜けた報道のみに留めるという、「子供ニュース」の方が、余程まともじゃないか!?てな感じの、お粗末な内容です。 そ... [続きを読む]

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