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『NASA 好機をつかむ組織』

タイトルと表紙(スペースシャトルの着陸)を見た時は良くある本の一種だなと思っていました。こちらの予想と違って国際政治や昔話に終始するパターンってやつです。
でも、すこし立ち読みしてみると国際紫外線天文衛星(IUE:International Ultraviolet Explorer)プロジェクトチームのリーダーシップ手法を論じた本です。
あのIUEです。つい最近「ロケットまつり」でお話を聞いた近藤陽次さんが関わっていた衛星ではないですか!
ビジネス本だから見送ろうとも考えましたけどやっぱり購入。

『NASA 好機をつかむ組織』
(トーマス・メイラン テリー・ティーズ著 高橋 由紀子訳 ISBN978-4-82222-4709-6 日経BP社)

「ロケットまつり」の中では、IUEは非常にうまくいった衛星とありました。
計画では3~5年の運用が実際は18年間も運用し、論文の数もあのハッブル宇宙望遠鏡よりも多かった、などなどおいしい話しが聞けました。

さて、この本を読んでいくとなるほど別の面でIUEがうまくいった理由が分かります。
「運を最大に生かす」「障害に対する耐性」「リーダーシップ」「権限委譲」というキーワードで組織作りとリーダー・マネージャ論が語られています。
運を最大限に利用、とたびたび出てきます。でもこのプロジェクトはタイミングとチャンスを逃さなかったし、そのための準備と計画を怠っていませんでした。

「組織には、ある程度の緩みや柔軟性が必要である。間違いや誤解は必ず生じるものだ。問題が起きた時に対処できる融通性をマネージャーに持たせなければならない」
この一文は、近藤さんが障害に対する耐性を備えた組織について述べた言葉です。
この様に関係者の言葉を例にこのプロジェクトの特徴を紹介しています。また、章ごとに「運を最大に生かすためのレッスン」としてまとめています。この本のプロセスがどの組織でも生かせるように紹介されています。

人工衛星を使用して宇宙を観測しその観測結果を研究する。
お客さんが天文学者なんてそんな商売めったにないんでしょうけど、よく考えてみればサービスを提供して組織としてみればそんなに分からない話しではないと思います。
観測結果という商品を科学者という顧客に提供する。それも一定以上のレベルで提供し続けるために、商品を生み出す人工衛星を保守しいつでも使えるように維持し続けるか。
つまり、ひとつのプロジェクトを高いレベルで動かす組織という意味ではどこにでもある事例です。

宇宙開発ファンの私からすれば、この本は、潔いほどIUEの歴史や科学的背景など語られていません。普通の本だったら一章くらい割り当てると思うんですけど……。
どこまでも成功した組織がなぜ成功したのかが先ほどの切り口で紹介されています。その点ではみごとにビジネス本として、細かすぎず読者にこのプロジェクトの仕組みを展開して解説されていると思います。
そういう意味では、ビジネス本として楽しめながらIUEのプロジェクトの凄さがあらためて実感できた1冊でした。

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