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『高校生のための批評入門』

中村正三郎のホットコーナーで面白そうな本だと思ったらそれ以上の衝撃がありました。

『高校生のための批評入門』
(梅田 卓夫・清水 良典・服部 左右一・松川 由博編 ISBN4-480-91705-5 筑摩書房)

“批評”という言葉は辞書で引くと「物事の善悪・美醜・是非などについて評価し論ずること」とあります。
しかし、この本ではまずこう語られています。
「みなさんは、世界にひとりしかいない「私」という人間として、考えています。「私」を、世界の中に考える主体として置くこと--これが批評のはじまりです。批評とは、世界と自分をより正確に認識しようとする心のはたらきであり、みなさんの内部で日々<生き方をみちびく力>としてはたらいているものです」とあります。

批評とは自分から外へ向かっての行為だと思っていました。この本では批評とは自分の内へ向けての行為であり思索と位置づけています。
評論や論説を初め小説やエッセイ、はたまた映画のワンシーンが文例として51編紹介されています。普通に考える批評には合致しない文章もこの本の主旨に寄り添うとそのように読めてきます。

各例文毎には編者からの設問がひとつあります。
これについては別冊で解説が行われています。このような趣向は「高校生のための」という題名にリンクしています。あくまでもそれは設問に対する解答ではなく、自分(この場合は編者)だったらこう考えるというレベルに押さえられています。その配慮が読んだ人間に自分と他者の理解と深い思索を生み出すんでしょうね。

私には、その意図をまだつかめない文例もありました。それでもこのような視線で文例を読むとまた違った読書の楽しみ、それは自分に向かっていく何かを新たに感じたような機がします。
ここで取り上げられた文例の豊かなこと。普段決まったジャンルの本しか読まない私には新鮮でしたね。批評という切り口から普段だったら読まない文章を読むことが出来る。これは良い発見でした。

今、この本の中で一番引っかかっているのが「ゴルディウスの結び目」という文例です。

「ゴルディウスの結び目の逸話」という話しがあって、その絡まった紐を誰も解いた人がいなかったのですが、ぶった切って見せた王様がいるそうです。いわゆるその知恵と独創性を褒め称えました。ところがそれを聞いたある母親がいったそうです。「結び目を切るんじゃない。ひもはいつでも役立つんだよ!」
この話の結びはこうなっています。
「……結び目の代わりに、そういう提言をする連中をこそ、一刀両断にするように、実際に徐々に転換していくべきだと、私は思います。」


この本を読んでいる最中にあの事件が起きました。
たぶん彼は「結び目」をぶった切ったんでしょうね。どんな結び目と紐だったのか私には分かりませんが。

色々情報が出てきていますけど、私は、弱い者いじめをされていた、または弱い者いじめをされていると勘違いしていた、……たぶんその両方なんでしょうけど……、今度は弱い者いじめをするのにあの街を標的にしたのでは、と思っています。なんの確証はありませんけど。
(あの街を知っていれば、好きでいればそもそも標的にしないでしょうし、最近ではちょっと表現が行き過ぎていて、パトロールが強化されているのは、見聞きしているはず。彼の望みが成功する確率は他の街よりも低い訳です。それでも凶行に走ったのは他の理由があるのでは、と考えたからです)

色々問題はあるけれどいろんな趣味が混在していてこんがらがっているけど、どこかはいつの間にかにちゃんと解けているあの街はそんな標的になる街ではないと思います。人よりは多めにあの街に通っている私はそう思います。

それに、ぶった切った結果は、彼はもとより誰もが望んでいた結果でないのは明白です。
ぶった切る前に紐をほどこうとしたのでしょうか?
これについては色々あると思います。それを乗り越えてその辺りを読み解いていかないと、いくつかのキーワードを取り上げては賛否両論出尽くすだけで……終わってしまうような気がします。


「ぶった切ったり」「ぶっ壊したり」で問題はなくなったようにみえるかもしれませんが、そこには壊された残骸しかそこらないでしょう。その残骸から出てくる物は後々の問題となる物もあるでしょう。
本来ならきれいに解体して使える物は再利用使えない物はちゃんと捨てて、次に使えるように更地にして初めて問題が解けたことになるんでしょうね。

批評することは、どこかに対立関係を持つのではなく、自分とその他の関係に思いを巡らして自分に返ってくる何かを糧にすることだと、この本を読み終わって思いました。もうちょっと読み返してみないと見えてこない物が多いですけどね。
私なりにゆっくり読み返していこうと思います。

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