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「はやぶさは飛翔した」

2006102901

先週末は「ロフトプラスワン」で宇宙作家クラブ主催の「はやぶさは飛翔した」がありました。
ちょうど出張が入るかどうかの瀬戸際でしたがなんとかなったので定時ダッシュで東京は新宿へ向かいました。
(出張だった場合、九州は福岡とか佐賀方面だったので、 佐賀県立宇宙科学館の「小惑星探査機「はやぶさ」の挑戦~『星の王子さま』への旅~」に行く予定でした(笑) どっち転んでも、ってやつです)

前回の 「はやぶさは舞い降りた」では、土曜日に宇宙研の一般公開が重なって、ロフトプラスワンの会場から地上へ続く階段に人の列が伸びていたので、今回もダメ元で開始時間ぎりぎりに着きましたがなんとか座ることが出来ました。

週末はこれ以外に予定が入っていたので相変わらずの今更の書き込みですがその分多めに書いてみようと思います。ものすごく興味深い話ばかりだったので(笑)
メモ書きなので間違っている部分もありますがご勘弁を。

今回は、『イオンエンジンとナビゲーションのエキスパートを迎えて送る「はやぶさライブ」第二弾』でした。
JAXA/ISASからイオンエンジン担当の國中先生とナビゲーション担当の吉川先生がゲストで来られました。
司会は、いつもの松浦さんと今回初めてお目にした小林さんでした。笹本さんとあさりさんは都合がつかなくて来られませんでした。(笹本さんは『小娘オーバードライブ』の続編を書かれているとかで)

最初に吉川先生から簡単な「はやぶさ」のナビゲーションについて説明がありました。
電波の往復で距離を電波のドップラー効果から探査機の方向を調べて位置を割り出すそうです。
惑星間は基準になるものがないのでナビゲーションは難しいとのことです。

軌道制御について、ふつうの探査機はスラスターを吹くときだけ大きく動くが「はやぶさ」はイオンエンジンを吹かし続けているので“微少加速度”があるので決定するのが難しいと。
太陽輻射圧の100倍がイオンエンジンの加速度という説明をされていました。
イオンエンジン担当からすると、“微少推力”だったら軌道を決定してくれ、ナビゲーション担当からすると、イオンエンジンが一定に動いてくれないか、とかありました(笑)

続いて、國中先生からイオンエンジンの詳細がありました。
メンテナンスフリーで壊れないものを目指して開発されたそうです。
平成5年に「小惑星ネリウスサンプルリターン工学系90日キックオフ会議」というご案内が川口先生から届いたそうです。現在の「はやぶさ」計画のことです。ここでイオンエンジンを使用する旨があって俄然やる気が出たそうです。

イオンエンジンの2年間耐久試験を行ったそうですが人間が張り付いたら“家庭”が持たないので完全自動にして行ったそうです。1995年のことで、インターネットがやっと普及した頃でしたが、データをリアルタイムで流していたそうです。
ちなみに、どんなやつが見に来るかと調べたらNASAのJPLなどが見に来ていたそうです(笑)
“ない”ところから作るのが楽しい、と言われていました。

試験が始まると楽しみがないので「パッチ」を作ったそうです。あの有名なアニメの後ろ姿に似た絵柄です。
1000時間ごとに1枚張るようにして1万8000時間地上で実証したそうです。ちなみに、波動エンジンではなくて「マイクロ波イオンエンジン」、補助エンジンではなくて「中和器」だそうです。

1990年前半にイオンエンジンを使用してくれるユーザーがいるかサーベイしたそうです。
使えるロケットがあるか。M5ロケットはまだなかったそうです。でも、深宇宙探査をやるのが当時の共通の考えだったそうです。
そこで何を準備したら良いのかと検討して、M5ロケットにぴったりのサイズで、500キロ衛星・探査機をターゲットにイオンエンジンを作ることにしたそうです。

実際に「はやぶさ」に搭載されたイオンエンジンですがさほど期待はされていなかったそうです。それなのに重要な部分を任されていると言う点が司会陣から指摘されると「そこが宇宙研的」だそうです。
「分からんもの、あやしいものを砂上の楼閣で積み上げる」そうです(笑)

イオンエンジンの運用ですがふつうの人工衛星を違って太陽電池の出力が変化するので、太陽電池の出力を踏み越えないように運用していたそうです。
地球から見えないときは送信機を停止して、送信機を使うときはエンジンを1台停止して、とやっていたそうです。
ですから、送信機を止めて再度止めたエンジンを始動出来たかどうかは次の日にならないと分からなかったそうです。

地球スイングバイには、「デルタベガ(?)」という航法を使ったそうです。
ターゲットが「ネリウス」のときはこの航法を使う予定がなかったのですが、ターゲットが「イトカワ」に変更になって、背走周り(? よく聞き取れなかった)のデルタベガを使ったそうです。

レッドストーン打ち上げたときのフォンブランの言葉が紹介されました。
これを「はやぶさ」流に言い換えた言葉が紹介されました。
「はやぶさは深宇宙への橋頭堡を確立した。主導権は手放さない」

「はやぶさ」帰還に対してのキセノンガスの残量で面白い話が出来ました。
全部で66キロ搭載。「イトカワ」到着まで22キロ使用。ガスジェットで10キロ使用して残り35キロ残っているそうです。
「積み過ぎたのでは?」という問いには、タンクは大きめにつくってあるとう答えが。ロケットの余剰重量が出たらその分燃料を積むそうです。いくら重量に余裕が出来ても観測機械など積むことが出来ないが燃料は積むことが出来るのでこのような方法をとっているそうです。


後半は「ナビゲーション」の詳しい話を吉川先生からありました。

打ち上げ後は軌道修正はなかったそうです。コースが良かったこととイオンエンジンで修正がきく範囲だったからだそうです。

イオンエンジン点火中は、推力の変動が大きかったので3週間に3日止めて軌道決定をしたそうです。
イオンエンジンを動かしたままでも軌道決定を出来るが方向と大きさを推定しきれないそうです。
JPLの支援を受けていてもイオンエンジンが点火中には軌道を推定してくれなかったそうです。理由は2つあってひとつは難しいこと、もうひとつは最先端のことなのでその技術を流出させたくないからだそうです。

スイングバイ後には、太陽の向こう側に「はやぶさ」が回り込んだため1ヶ月弱正しい位置決定が出来なかったそうです。その誤差は、太陽の向こう側にまわる前で200キロ、回り込んだ後で1800キロもあったそうです。
しかし、「イトカワ」の写真を撮っただけで誤差は45キロになったそうです。惑星間から「イトカワ」の支配する領域に移れたそうです。
8月の終わりには、誤差1キロまで追い込んだそうです。

DNSの支援を受けるにあたってJPLから人が来ていたそうですが、中には“分身の術”を使う人がいたそうです。
なんでも自分の仕事がやりたいので別の部屋で解析をするために使った技だとか(笑)

ナビゲーションをしていて一番不思議だったのが、第1回目のタッチダウンだそうです。
ドップラーのデータをモニターしていたら、一度離陸した「はやぶさ」がどんどん「イトカワ」に接近していった。
その理由が分からずに、「イトカワ」が予想以上に柔らかくてどんどん入っていったとか、軌道をずれてどんどん「イトカワ」の反対側に抜けていったとかは想像していたそうです。非常にハラハラしていたそうです。
実際のところ、それは「イトカワ」に着地いた「はやぶさ」の動きを「イトカワ」の自転とともに見ていた訳だったそうです。

来年の2~3月にイオンエンジンが動き出して「はやぶさ」が帰還を開始すると軌道決定グループは忙しくなるそうです。ケミカルスラスターが使えないので姿勢制御と軌道制御を両方うまくやりながら精密な軌道決定をしなくてはいけないからです。かなりチャレンジングなことになるそうです。
でも、動力飛行中の軌道決定が出来るとイオンエンジンを吹いている時間が長くできるからです。

「イトカワ」にクレータがないのに一番驚いたそうです。
実際は40~50個くらいあるが小さくて目立たない。
エロスなども500mスケールで見るとクレータがないところもある。500mだけ見れば岩がごろごろしてクレータがないところもある
当初の予想ではたくさんクレータがあってクレータのサイズ分布から年代を探ることを考えていた。先入観があるのは良くない、と言われていました
岩のでこぼこ(ボルダー)のサイズ分布・個数密度を調べてイトカワの形成過程進化を調べることをサイエンスの人が現在やっているそうです。

「イトカワ」の地名で「ウチノウラ」「ミューゼスC」「サガミハラ」について夏の国際天文学連盟(冥王星で有名になった学会)で正式に認められたそうです。ミューゼスシーは最初sea(海)で登録しようと思ったらダメだと言われたそうです。理由は小さすぎて“海”ではない(笑) 月の海と比べても小さすぎるから、だそうです。
ラッコのおしり(話の中でときどきこのような表現が出てきました。いわゆる「ラッコ座標系」です)の「ウーメラ」を提案したが火星で使われているのでだめだそうだ。形がはっきりしていなくてどの領域のことだか分からないのも理由。

「はやぶさ2」と「はやぶさマーク2」について
JAXAとしては太陽系探査を議論しているそうです。最先端をしたいし、どうやってアメリカと対抗していくか。
日本の得意分野 小惑星探査と惑星環境(磁気圏・プラズマ圏・大気)をメインの柱として対抗していく。
「はやぶさ2」はまだ予算化していない
2010年11月にひとつのウィンドウが開くそいうです。C型の199JU3という小惑星だそうです。
大きさを変えると本質的に設計変更する必要があるので「はやぶさ」のコピー機で行くそうです。

「はやぶさ」が「イトカワ」を見て面白いと「世界」に分かってしまった。ぜひ一緒にやりたいと言われる。
日本の路線をもっていると交渉するときに強く出られる。競争するけど協力もする。
動きが激しくなっている。日本はリードしたい。

「はやぶさ」シリーズを応援する方法。
JAXAにメールする。作家の人が本を書く(笑)
メールは効果がある。絶対数が少ないから(笑)
はやぶさへのメールはミッションの人にちゃんと読んでもらっている。

「はやぶさマーク2」について。
「はやぶさ」S型小惑星「イトカワ」、「はやぶさ2」(2010年)C型小惑星「?」、「はやぶさマーク2」(2015年)「?」という構想があるそうです。
モデルが違うので“マーク”2となったそうです。
もともとは「はやぶさ」の次のミッションとしてマーク2があった。でも、急遽はやぶさのコピー機をさっと打ち上げる計画が出てきた。
マーク2の目標はD・P型の小惑星、もしくは彗星核。デットコメットか本物の彗星、本体から物質を持って帰りたい。
一つとして「ウイルソンハリントン彗星」という彗星が行きやすいそうです。ほかの軌道も検討している。
そこに行くのはイオンエンジンが必要!
エンジンが大型かすると搭載機器が増える!


質問も随所にあってこれも良かったです。
「はやぶさ2」が現実になったらどのロケットで打ち上げるか、にはH-IIAしかない。時期的にGXは間に合わないとか、「はやぶさ」のプログラムは「AT(オート)コマンド」と呼ばれる32個(!?)の命令を組み合わせているとか、とか。

最後に、財務省へメールを書こうとありました(笑)
「はやぶさ2」の予算化が厳しいという話から、応援する方法はという話の中で出てきました。
すでに松浦さんのブログMEF「はやぶさ勝手に応援ページ」でもメールの呼びかけが行われています。
私も文章考えて送ってみようと思います。


今回はいつにもまして興味深い話ばかりでした。
専門家がひとつひとつの事柄を説明してくれるのは贅沢なことですがやっぱり理解が進みます。
見聞きしたことでも全然理解せずに楽しんでいたことが分かって良いです。

こんなことがそうそう続くとは思いませんが、ぜひ今後も続けてほしい。
司会陣の方々ゲストの方々、それからロフトプラスワンの方々ありがとうございました。
次もよろしくお願いします。

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受信: 2007/11/04 23:11

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